エアポケット


哀しくて仕方がないのに

空は青空

さよならと言ったのに

言葉は誰も何も許してはくれない

上を向いて

眩しい光

目を細めたのは君で

街中に吹いた風の匂いを文字にする事も、言葉にする事も出来ないのに

僕は君の側にいて行き交う人々を眺めている

理由などいらないし、知りたくもない

適当な相づちで

その場をやり過ごす日常のエアポケット

昨日、テレビで見た事件をぼんやりと思い出す

飛行機の中で叫んだ少女と透明な死の匂いに満たされた機内

アナウンサーと女性キャスターの冷静なやりとり

束の間、「ご利用は計画的に。」とかわいらしい女の子が無邪気に微笑む

おざなりにしてきた感情

大事な時にはいつも嘘をついて、掌はいつまでも空に届かない

欲望の拡声器で演説する恰幅のよい男の声にかき消された、

もどかしい思い以外、一体僕に何が必要なんだろう?


少女が誤って落としたアイスクリームが

地面にゆっくりと溶けだしてゆくのをなす術無く見つめながら

僕はいつまでも

君の帰りをまっているんだ




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