インチキなバラード


闇のなか、切売りされた夢が俺の絶望を刺し貫く

凄惨な空の青

傷口に染み込んだ硝子の代償

街灯の薄ら笑いに従順な時のしもべ

暗渠の淵から忍び寄る夜気に唾を吐き

鋼鉄の鎧を纏ったがさつな紳士達の群れが

夜の欲望という欲望を食い尽くす

アスファルトに染み付いた絶望の汗

アスピリンで武装した女達の饗宴

寂しさは道端に転がる石のようなものだと

よだれを垂らした碧眼の犬が笑う

立ち昇る火葬場の煙に染み込んだ残酷な電波塔

ドラムの猥雑な叫びに絡み付くインチキなバラード

手を差し延べて

頭をたらして

凄惨な肉のかたまり

赤く変色した涙だけが型落ちした、罪の形に縁取られる

ガスパールのタンジェリンブルー

筆圧の強いディレッタント

弦の溶けたフェンダーを抱いて眠る秘密の審議官

扉を開けたのは?

どろどろの指先から

劣悪な嗜好品

苦い煙の味と伝染するアルコールの屈辱

危険な約束を燃やした擦り切れた唇から

赤い血がじんわりとにじむ

黒髪の女が起こした孤独な事件が

デジタル記号に組み替えられ

夜の街を駆け巡る

朦々と立ち上る炎のパーティー


無関心な誰一人

好奇な目を向ける以外の目はむけない


それは

あまりにもありきたりで

俺はアンモニア臭に満たされた街路脇で

秩序を弁えた死刑執行人のような気持ちになるのだ


おまえの目は最後に何を見たのか?と







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