夜の猫

惑星を担う夜の猫

統率のとれた回想で太陽の街を闊歩する

駅前で眠る老人は孤独の代名詞

鼾に同化した道化のあやつりは死人の爪先に

古いフィルムの巻き戻しのような焦燥を与える

それは私が感じたもの?

焼けただれた夏の庭に

れてきたのはいったい何の勧告だったのだろう

見知らぬ老人に渡された

薄汚れた白黒写真に写っていたものは

誰かが明日を憂れう姿にそっくりな

下町の建造物の破片だった 

懐中時計の隙間から覗いている機械仕掛けの夜のばね

繋ぎとめようと赤いだ円のベンチに腰掛けて

枯葉の舞う午後を見上げている

名前を付けて餌をやる黒猫達

溢れる遺言に耳をかたむけて必死に残飯を漁る大人達

いつからか細い排水溝の流れに並進することで

物事の重みを感じ取っている

桜の重みが胸に染みる四月の午後に

季節を回想する一匹の猫と老人は

穏やかな日差しの中

世界の意地悪な戯れに

ただ一時

心を忘れて静かな鼾をかいている

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